2017年05月15日

『武州通信』第239号

 犯罪を計画段階で阻止すると謳う「共謀罪」。その成立が着々と進んでいます。一般のマスコミでは報道されませんが、裏では反原発の活動家までリストに載り「共謀罪」の対象にされているとも言われています。うーん … 
 さて、こんな重い話はここまでにして、今号はもっと明るい話題にしましょう。

《青春の吹奏楽》の巻

 風薫る5月と言うけれど、その日(5月5日)は7月並みの暑さで、鼻の頭にじわっと汗の雫が。府中の街の一角を歩く。そうか、今日は端午の節句だよね、でも鯉が一匹も青空に泳いでいない。何の変哲もない相変わらずの町並みが続く。ふと昔の端午の節句の賑わいを想い描き、ちょっと物足りなく寂しく思う。
 こんな気分のまま、バス停から歩くこと10分。その日の目的地は『府中の森芸術劇場』。武州卒業生の野口りなちゃん(高校2年生)が所属する「都立片倉高校吹奏楽部」の「第23回定期演奏会」である。

 トランペット、サックス、トロンボーン、クラリネット…、さまざまな楽器が四方からの照明に輝き、金色の光を放って幻想的でさえある。50名ほどの奏者の楽器が一斉に曲を奏でる。スカイブルー・ファンファーレ。最初の一音からお腹にズシンと響きわたる。

 りなちゃんのパートはホルン。そう、あのカタツムリそっくりなホルンである。さて、カタツムリはどこだ。あっ、いたいた5つのカタツムリが…。どれが僕の目指す「りなちゃん」だろう。まずは鑑賞そこそこにりなちゃんを探す。眩い輝きに目が少しずつ慣れてくる。… そうだ、間違いなくあの子だ。真剣に演奏しその合間にちらっと見せる親しみのこもったあの面持ちは確かに見覚えのある武州の頃の「りな」だ。黄色い衣装に身を委ねたその姿は思いのほか舞台栄えしていた。この新しい発見に、なぜか僕はちょっと戸惑う。それは僕の知らない少女の一面を宿していた。

 片倉高校の吹奏楽部と言えば、昨年度は「全日本吹奏楽コンクール」で“銀賞”、「日本管楽合奏コンテスト」で“最優秀賞”、「全日本高等学校選抜吹奏楽大会」で“優秀賞”などを受賞している。高い目標を掲げ、それに向けて弛まぬ努力を続けてこのような数々の実績を重ねてきたのである。授業前に朝練があり、放課後も夜遅くまで練習し、その果実がここに実っている。

 りなちゃんは中学時代のあるときから片倉高校への進学を強く希望するようになった。僕は、成績的にはもっと上の高校を目指せるのに…、と思っていた。そして、そう語った。彼女が中学の「ブラスバンド部」で頑張っているのは知っていたが、僕が関わっているのは机に向かう生徒なのだ。“成績が全てではない” と内心では思いつつ、目の前の生徒を見るとやはり “もっと上にいけるのに” と、ちらっと思ってしまう。ー ところが、こと、これに関しては、うちの “りな” は何とも頑固であった。と言うより、とてもとても想いが深かった。そして、推薦入試に合格し、片倉高校の生徒になった。あれから一年、その成果がこの日の演奏会なのだ。

 『府中の森芸術劇場』「どりーむホール」の2000席はほぼ満席だった。 次々に繰り広げられる素敵な演奏やパフォーマンスに盛大な拍手、時には手拍子それに笑い。僕は芸術には疎いからまともな批評はできないが「とても素晴らしい演奏だった」と心より思う。これが全国レベルの演奏なのだろう、と。そして、りなちゃんが “何故この高校にあれほど深い想いを寄せ、選んだのか” すとんと腑に落ちた。そうだ、それで良かったのだ。

  「千日の稽古を『鍛』といい、万日の稽古を『錬』という」(宮本武蔵『五輪書』)。今春卒業した元部員達は「千日の鍛」という一区切りを立派に終え、そのはち切れんばかりの笑顔が清々しい。今年2年生になったばかりの “りなちゃん” は「三分の一の鍛」、まだまだ道のりは長くて遠い。でも、今年も全国を目指して…。
 人生は、季節と同じく、青春、朱夏、白秋、玄冬。ー 青春の未来は目覚めたばかりの朝空のように未知数。だから、きっと、悩み、傷つき、苦しむこともあるだろう。そう、そうした試練を含みつつ、“可能性の未来へ一歩踏み出す”、それが「青春」なのだ。

 帰り道、夕映えの余光が、透明で爽やかな空気を漂わせていた。

(斉藤 悦雄)

【インフォーメーション】
5月20日『武州大学』 7:00pm〜
     テーマ :20世紀初頭『純粋志向』の潮流    
    レポート:斉藤悦雄
6月3日『オアシス武州』7:00pm〜
posted by 武州ゼミナール at 12:20| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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