2015年09月28日

『武州通信』第225号

 秋の彼岸に炎のように燃え出ずる彼岸花。曼珠沙華とも言う。この世(此岸)に咲きながらあの世(彼岸)の名をもつ、いとも妖しげな花である。
 その花を愛でつつ、一足先に旅立たれた懐かしい知人の面影を追う。

《ドイツ遊学記》の巻 

 武州の玄関に、梶原真秀(かじわらまほ)君のドイツ土産の“梟の置物”が目を光らせています。ミネルヴァの梟? ギリシャ神話では梟は知恵の女神アテナ(ローマ名ミネルヴァ)の使者で“知恵の象徴”とされています。

 ところで、9月12日(土)の『オアシス武州』は、その梶原真秀君の「ドイツ遊学記」でした。そうです、“留学記”ならぬ“遊学記”です。ドイツでは果たして知恵の女神は彼に微笑みかけてくれたのでしょうか?

 真秀君は武州の卒業生で今では武州大学のメンバーです。そして昨年の8月から今年の3月までドイツのニーダーザクセン州のオスナブリュック大学で哲学を学んできたのです。半年? それにしても期間がちょっと短すぎますよね。それにはさまざまな事情がありまして…。本当なら3年間のつもりだったのですが、何しろ苦学生。欧州評議会の大学入学資格試験でドイツ語のC1(英検なら1級レベル)に合格し、見事大学入学を果たしたものの、一番の悩みはやっぱり金銭問題。手持ちのお金は心細く、アルバイトもままならず、住むところを探すにも一苦労。ドイツでは不動産会社を通して下宿先を斡旋してもらう習慣はないらしく、自力で探さなくてはならなかったとのこと。大学に掛け合ったり電話をしまくったりで、漸く個人の家に同居させてもらうことができたようです。これだけでも観光旅行では決して得られない貴重な体験ですよね。

 さて、ドイツの大学では、物事を深く掘り下げて思考する学生が多く、とても積極的で熱心だったと言います(日本の大学生とは大違い?)。それに、かの国では大学ばかりでなく、州立のラジオ局には“哲学ラジオ”という哲学専門の放送局もあるし、公共のZDF(第2ドイツテレビ)には「哲学4人組」という番組があり、哲学者や専門家がさまざまな論点で討議し、視聴者も積極的に参加しているらしい。また、リヒャルト・D・プレヒトという哲学者の『哲学オデュッセイ』という著書はドイツで100万部以上も売れているとのこと。こうしてみると、ドイツがローコンテクスト文化(馴れ合いではなく、論理と思考を重視する文化)に属するというのも頷けますね。どうやら、ドイツが日本の原発事故を契機に“原発の廃止”を実現できたのも、何が根本的に重要かを徹底的に追求するこうした哲学的な文化が、政治家だけでなく国民にも根付いているからかもしれません(文系軽視のどこぞやの国とはずいぶん違っていますね)。

 また、カーニバルの時には、ドイツのメルケル首相がアメリカのオバマ大統領のお尻から顔を出している山車(?)が曳かれたり、政治に対する風刺もかなり自由奔放なようです。オバマ大統領のお尻から安倍首相が顔を出している山車なんて…、日本では考えられませんよね。ともかく表現の自由もここまでくると「凄いなぁ!」としか言いようがありません。カーニバルで配られたというコースターには「酒を飲みすぎるな」と書かれており、そこにはゲロを吐いている男の写真が…、これを敷いてビールを飲む気分はどうなんだろう? と、参加者みんなで大笑い。とはいえ、言論の自由、表現の自由もあまり度が過ぎると、今春問題になったフランスの週間新聞シャルリー・エブドに掲載されたムハンマドの風刺画のように、他の文化に対する侮辱や無神経さに陥る危険性もあるけれど…。

 真秀君の話を聴きながら、文化基盤や思考の前提の違いに驚かされてしまう。ハイコンテクストの文化(馴れ合いや曖昧さを許容する文化)の代表のような日本の社会に足りないものがそこに垣間見えるような気がします。どうやら、たった半年の留学生活、いや遊学生活、なかなか有意義だったようですね。真秀君の顔つきも行く前と帰った後とではずいぶん異なっているように見えます。大学の内だけでなく大学の外でもさまざまな空気を吸って、人生の糧を得てきたのかもしれません。
 どうやら知恵の女神は真秀君にいっぱいいっぱい微笑みかけてくれたようです。    

(斉藤 悦雄)

【インフォーメーション】
 10月17日(土)武州野外大学
  テーマ:『大磯』探索 〜大磯に兵どもの夢のあとを訪ねる〜
  (日時)  10月17日 午前10:10
  (集合場所)湘南新宿ライン「二宮駅」改札口(雨天決行)
  (交通案内)@新宿駅 8:53(湘南新宿ライン特別快速小田原行平塚乗換)10:09着
         A新宿駅 8:23(湘南新宿ライン快速・国府津行)9:44着
   ※関心のある方は是非参加してください。
posted by 武州ゼミナール at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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